アナザーラウンド(DRUK)
配給:クロックワークス
監督:トマス・ヴィンターベア
脚本:トビアス・リンホルム
トマス・ヴィンターベア
主演:マッツ・ミケルセン
原題の『DRUK』はデンマーク語で大酒を飲む、酩酊、酒害などの意味があり、ニュアンス的には『飲み過ぎ』的な感じです。
どちらの日本語訳もしっくりと来ないのであれば、原題のままの方が良いのでは無いかと思うのは私だけでしょうか?
◉アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞したこの映画、見逃してはいけません。
心におだやかな笑いと、せつなさと、ずっと奥底に沈む熱い想いなどを拾い出してくれます。
良い映画の条件は『美しい映像、そして印象的な音楽、心に触れてくるストーリー』です。
「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと仕事やプライベートのパフォーマンスが上がる」という哲学者の理論を証明しようと、家庭にも仕事にも疲れた高校教師の同僚4人で実験を始めるのだが、この4人のおっさん実に魅力的であり、そしてどこにでもいそうな感じがなんともたまらなくいい。
ざっくり乱暴に言えば人生に疲れたおっさんとそれを冷ややかに傍観している人達こそ見てもらいたい映画です。
デンマークという国はビールやワインなどのアルコール度数の低い酒(16.5%以下)ならば16歳からOKらしく、今や飲んだくれが社会問題になってるそうです。
そういった背景も描きつつ、この映画は時には軽やかに、時にはストレートに生きる意義を問いかけてきます。
友情、夫婦間の問題、仕事、アルコール依存という重いテーマを折り込みながらも、決して重苦しくなく、静かに降り積もる雪のように心に積もっていくような感じです。
なんせ北欧の至宝ですからね。
視点を変えてファンならマッツ・ミケルセンのPVとして観るのもありだと思います。
ラストシーンはマッツファンは思わずのけぞってしまうほどたまらんのではないでしょうか?
ちょいワル親父を目指してる人もそうで無い人も、人を惹きつけるものが何かを知りたければ、観るべしです。
もう一つ忘れていけないのが、ところどころで心を撃つセリフです。デンマークの哲学者キルケゴールの言葉であったり、デンマークのバンドScarlet Pleasureの『What A Life』の歌詞だったりと、引用が秀逸です。
観る人の心に残るセリフをそっと置いてくる、そんな映画です。